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POWERPOP / GUITARPOP / All about MELODIC ROCK

SPIRALING / Time Travel Made Easy


(2008/Dancing Pawn Music/USA)
 ニュージャージー州ニューブランスウイック出身の3人組・スパイラリングの08年リリースのセカンド・アルバム。疾走感溢れるピアノ・ドリブン・パワーポップを聴かせてくれる。ベン・フォールズから、サムシング・コーポレイト〜ジャックス・マネキン辺りが好きな人までオススメですね。
 中心人物のトム・ブリスリン(Vo/Key)はかつてイエスやミートローフでキーボード奏者として活動していたという経歴の持ち主。彼の豊富な音楽的バックボーンに裏打ちされた、時にアッパーで、時に叙情的な、琴線に触れまくる泣けるメロディライン、様々なスタイルの多彩なアレンジは、パワーポップという狭意のジャンルに押し留めるのはもったいない気がする。
 さて、本作に触れよう。ドラムロールとギターのフレーズが静かに、そしてジワジワと盛り上がるイントロダクション("Cold Open")に続いて飛び出すのは、アッパーなポップ・チューン M-2 "The Future"。ドライブするギターに、力強いピアノの打鍵、シンセのフレーズが飛び交い、推進力を持ったメロディがドラマチックに盛り上げる。つかみはOKといったところだ。
 続く M-3 "The Concept Of The Quatum-Mechanical Bodymind Has Sparked A Great Idea" は一転プログレッシヴ(タイトルからして!)な展開でオヤッとさせるが、M-4 "You Might Say" ではまた疾走感溢れるゴキゲンなエモ・チューンで攻める。で、続く M-5 "Are You Here" が美麗なピアノ・バラードでウルウルとさせる。この辺の緩急自在さが実に見事。
 コールドプレイがデュラン・デュランをプレイしたような M-6 "Velocity Kiss"、シカゴ音響系なシンプルなバックトラックにボーカルの浮遊感が気持ちいい M-7 "All Kinds Of Love"、静謐なピアノ弾き語り M-8 "Enemy"、スペイシーなシンセとベースのフレーズがグルーヴィに曲を推進させる M-9 "Choices"、エフェクトのかかったリズムマシーンとグランド・ピアノ系の重い打鍵の音が静かに感動を呼び起こす M-10 "Time Machine"。これはホントいい曲だ。
 アコギとピアノとストリングスが寄り添うようなハーモニーを見せる M-11 "Count To Four"、M-12 "Borrowed Time"では再びアッパーなドライヴィン・チューンでガーッと盛り上げ、最後はピアノ弾き語りの M-13 "At Every Turn" で静かな、そして、あっさりとしたエンディング。1分間のブランクの後、"Velocity Kiss" のリプライズのうちにCDはゆっくりと回転を止める。
 まるでひとつの旅のように色々な場面を見せながら、元いた場所に(もしかしたら微妙に元とは違う場所に)帰ってくる。アルバム・タイトルの「タイム・トラベルは容易にできる」というのは、その辺から来ているのだろうか。音楽の過去の遺産の歴史を巡ってきた旅のようにも思える。
Myspace|CD Baby